ホーム
> 海外におけるBCL活動レポート >
ベトナム・ホーチミン現地受信局調査
ベ
ト ナ ム ・ ホ ー チ ミ ン 現 地 受 信 局 調 査 《 「ベトナム」の基礎知識 》 ベトナム社会主義共和国 (Socialist Republic of Viet Nam) はインドシナ半島東側に位置する細長いS字型の国で、中国・ラオス・カンボジアの3カ国と国境を接している。 面積は約33万平方キロメートルで、これは九州を除いた日本の総面積とほぼ等しい。 人口は約7,200万人。多民族国家で、人口の約90%をベトナム人(キン族)が占め、残りをタイ族、クメール族、ムオン族など、約50の少数民族で構成している。一般的に、ベトナム人は平野部に、少数民族の多くは国土の3/4を占める山間部に居住しており、生活習慣なども多種多様。 公用語はベトナム語であるが、少数民族独自の言語・方言も多数存在しており、これは放送にも色濃く反映されている。英語をはじめとした外国語は都市部(但し、中級以上のホテルや主要観光名所など)で通用するが、地方ではあまり期待出来ない。 気候は、北部が亜熱帯気候、南部が熱帯モンスーン気候。特に南部は雨季と乾季の区別しかなく、年間を通じて平均気温が27度以上という暑さである(→ 日本の真夏の気温に、湿度を倍にしたようなジメジメした暑さがほぼ1年中続くと考えればよい)。 日本との時差は2時間。日本の午前9時がベトナムの午前7時、ということになる。 現在ベトナムで流通している貨幣の基本単位は、ドン(Dong)。200、500、1,000、2,000、5,000、10,000、20,000、50,000ドンの8種類の紙幣が発行されており、そのすべてにホーチミンの肖像が印刷されている。ちなみに、硬貨はない。「50,000ドン」などというとものスゴイ額のような感じもするが、ドルとの為替レートは「US$1.00=約11,000ドン」であり、紙幣の最高額でさえ僅か約5ドル。日本をはじめとした先進国とは、物価の感覚が根本的に違うのである。私など、ホテルで100ドルをドンに両替したところ、"Sir, here's one million Dong."と言われ、カウンターに出されたドンの札束を見て、思わずブッたまげたものである。もちろん物価も、当然のことながら、日本とは比較にならないほど安い。 日本からベトナムは、直線距離にして約3,600キロ。1994年11月から日本航空とベトナム航空が関西国際空港(以下、関空と略す)とホーチミンを結ぶ直行便の共同運航を開始、アクセスがたいへん楽になった。日本航空便は水・金・日の週3便運航されており、関空を14:15に出発すると、ホーチミンには17:30に到着する(所要時間、約5時間15分)。ちなみに、今回私が利用したのがこの便である。 また、ベトナム航空便は、日・火・木の週3便運航。関空11:20発、ホーチミン到着15:10である。 ベトナム航空便の方が現地到着が若干早い分時間を有効に使えるという利点はあるが、日本航空の方が何となく安心という向きは、出発の曜日を考慮の上でスケジュールを組めばよい。(帰りにホーチミンから香港まで約1時間半ベトナム航空に乗ったのだが、確かに心理的にはかなり不安なものがあった ^^;;) ご参考までに、他国を経由してベトナムに入国する方法としては、香港、バンコク、ソウル、シンガポール、高雄など幾つかの選択肢があるが、運航便数の点からいって、やはり香港経由が一番便利ではないかと思われる。ただし、これらの場合はすべて成田発着となるので注意が必要。東京近辺に在住の場合、やはり羽田発着関空経由の直行便を選ぶのがベストであろう(JALのDC-10は、エコノミークラスでも座席がゆったりしているので、なかなかFBである)。 ベトナム渡航に際しては滞在期間の長短に拘わらず、ビザの取得が義務づけられている。個人での手続きは面倒であるが、旅行会社に依頼すればこれをすべて代行してもらえる。必要なものは、残存期間が3ヵ月以上あるパスポートと写真(縦4cm×横3cm)2枚のみ。ブラックリストにでも載っていない限り、通常は約1〜2週間で取得可能。ちなみに、代行手数料は\12,000.-程度(旅行会社によって異なるが、大体これ位が相場らしい)。 《 ホーチミンにおける放送事情 》 まず、ホーチミン市内で受信出来た中波、FM局のうち、主なものは下記の通り。 ※ 時間表記:ベトナム・ホーチミン時間(JST−2h) 【 中 波 】
【 F M 】
まず、ホーチミン市内では -
1. Dai Tieng Noi Viet Nam (TNVN : Radio the Voice of Viet Nam) の2局がラジオ放送を行っている。 前者はハノイに本局がある政府直轄組織のホーチミン支局で、後者はホーチミン市人民委員会が運営する放送局である。 では、それぞれについて解説する。 1. Dai Tieng Noi Viet Nam (TNVN : Radio the Voice of Viet Nam) ホーチミン市内では、第1放送が655KHz、第2放送が558KHz、FM放送が96.9、99.1、99.9MHzで、それぞれ良好に受信できた。知り合いのDXer氏が1994年4月下旬に現地で調査された際には、第2放送の558KHzは確認できなかったとのことであるが、いつの間にか復活したのであろう。現地人にこの件を問い合わせてみたが、558KHzの停波、復活について誰ひとりとして気に留めている者はいなかった(当然といえば当然)。 一方、FMについては、事前に情報を得ていたのは99.9MHzのみであったが、これに加えて前述の2波がいずれもパラで受信できた。これがイメージなのか、正規の中継局からのものなのかは資料がなく、確認できず。が、いずれにしても受信できたことだけは確かである。 また、知り合いのDXer氏から頂いていた資料によれば、中波の放送時間は、第1、2放送共に月曜日〜土曜日は05:00〜00:00、日曜日は05:00〜23:00とのことであったが、残念ながら日曜日の終了時刻は確認し損なってしまい、23:00にs/offしているかどうかは不明。但し、滞在期間中の他の日は、いずれも*04:55〜00:00*のスケジュールで出ていることを確認した。 開始時は、第1、2放送ともに04:55から突然開始音楽が流れ、05:00にIDが「Day la Tieng Noi Viet Nam!」と出た後、いきなり「ラジオ体操」となる。これがなかなか面白くて、日本のモノと同様ピアノの伴奏に合わせて「1, 2, 3, 4...」と数字を読み上げるのであるが、思わずイスから転げ落ちそうになってしまう滑稽さである。ちなみに、ベトナム語の数詞は、1 (mot) 2 (hai) 3 (ba) 4 (bon) 5 (nam) 6 (sau) 7 (bay) 8 (tam) 9 (chin) 10 (muoi)であり、これを知っているだけでも十分楽しめる。 話が逸れてしまったが、「ラジオ体操」の後には合唱の音楽が流れ、05:10に再び上記のIDが出た後、「ファシストをせん滅しよう」(=ベトナムの声日本語放送の開始部分で流れる音楽。ただし、アレンジは異なる)が流れる。 ここまでが第1、2放送共通で、その後は別番組となる。ちなみに私が確認した限りでは、「ファシストをせん滅しよう」は正時などに時々流れているようで、開始時以外では655KHzの第1放送で06:00などに確認出来た(他の具体的な時間までは調査できず)。また、ISは第1放送で06:00の時報前に数分間流れている。 ところで、旅行前、DXer氏から「広告とお知らせ (Quang cao:Advertisement & Announcement)」なる番組?がTNVNで放送されている「らしい」という話を伺っており、とても興味深かったので早速狙ってみたところ、第1放送の06:55〜06:58に定期的に放送されていることを確認した。自分の滞在期間中は、ペプシコーラや味の素のCMが聞けた。その他11:30〜11:40(第2放送で月〜土の放送)や17:45〜18:00(第1, 2放送で毎日)にも放送されているらしいとのことであるが、これについては残念ながらチェックできず。また、現地で録音した受信テープを帰国後解析していたところ、通常の番組枠内でも時々CMが流れているのが確認出来た。いずれにしても、更なる調査が必要であろう。 一方、96.9、99.1、99.9MHzのFM放送は、*06:55〜23:00*のスケジュールで放送されていた。キャリアは06:35頃から入っていて、06:55から5分間ISが流れ、07:00に4点鐘の時報、開始音楽で番組が始まる。中波で開始時に放送されている「ラジオ体操」はFMでは流されておらず、朝から専ら音楽中心の番組構成。ただし、音楽番組とは言ってもベトナム民謡が中心で、お世辞にも楽しいというようなものではない。私がチェックした限りでは、ほぼ毎正時にニュースがある以外は滅多にトークも流れず、ハッキリ言って退屈そのものである。従って、開始時・終了時以外は殆ど調査していない。 A Dai Tieng Noi Nhan Dan Thanh Pho Ho Chi Minh (The Voice of the People of Ho Chi Minh City Broadcasting Station) DXer氏から頂いていた資料によれば、第1放送が610KHzで、第2放送が1040KHzでそれぞれ放送されているとのことであったが、このうち第2放送の1040KHzは855KHzへQSYしていることを確認した。(もちろん、この周波数はWRTHにも記載されていない。) この855KHzは、第1放送の610KHzと併せてホーチミン市内では大変良好に入感していた。 さて、その資料によれば、同局のスケジュールは次のようになっている。
▽ 第1放送(610KHz)
▽ 第2放送(1040KHz (編注:実際には855KHz)) このうち、早朝の開始時のパターンは、610KHzに出ている第1放送が*04:43〜IS、04:45〜開始音楽・アナウンス、855KHzの第2放送が、*05:28〜IS、05:30-開始音楽・アナウンスとなっていた。上記のスケジュールによれば、番組は1日3回細切れとなっているようであるが、これについては時間の関係でチェックできなかったので、実際どうなっているのかは不明。(残念!) 特筆すべきは、第2放送である。 1040KHzから855KHzへのQSY発見もさることながら、*05:28〜IS, 05:30-開始音楽・アナウンスと出た後、引き続いて30分間の「欧米ポップス音楽番組」があることを確認した。自分が聴いた限りでは、6/1がDebbie Gibson、6/2がEaglesの特集(ベトナムで聴くDebbie Gibsonというのは、なかなか妙な雰囲気にさせられる)。しかも、06:00からは英語番組があることを確認。滞在中チェックした限りでは、06:00〜06:05が「Local News」、06:05〜06:10が「International News」、そして06:10〜06:15が「Feature」なる日替わりのコメント番組であった。 これだけでも十分DXer魂を興奮させるに十分なのに、更に06:15〜06:30には「英語講座」が続くのだからたまらない。この「英語講座」、ちゃんとテキストに基づいた、なかなかの内容。後日、ホーチミン市内の本屋を回ってこのテキストはないかと一生懸命探してみたのだが、残念ながら発見するには至らなかった(レジのオバサンにも尋ねてみたのだが、「そんなものはない」の一点張り。どうやら、単に捜すのが面倒臭かったようである)。 ご参考までに、06:00からの英語番組の開始時に出ていたアナウンスは次の通り。 "This is Radio Ho Chi Minh City. Our program broadcasts daily on 350 maters AM band, 855 KHz at 6 a.m. and 6 p.m. Hello and welcome to the news report on Radio Ho Chi Minh City." これによれば、1日2回、18:00にも英語番組があるとのことであるが、この時間は出歩いていたので、残念ながら調査出来なかった(ある、というものはあるのだろうが・・・ ^^;;)。 ちなみに、6/1の06:00〜06:05に放送された「Local News」では、アメリカ・フロリダ州知事で民主党議員のPeter Peatson氏が初代在ベトナム大使に任命されたこと、ホーチミン市近郊のBien Hoaに建設が予定されている工業団地建設に対し、政府が特別予算計上を決定したこと、06:05〜06:10の「International News」では、イスラエルの首相選挙でペレス氏が敗北したこと、2002年のサッカー・ワールドカップが日韓共同開催に決まったことなどを伝えていた(私はこれで初めて共同開催を知った・・・)。滞在中に私が聴いた限り、このニュース番組は主な事件を一通り網羅しているという印象を受けた。 《 総 括 》 今回はタイトルが「ベトナム・ホーチミンにおける現地受信局調査」ということで、前述のリストには敢えて記載しなかったのだが、ホーチミン市内でループアンテナを回すと、夜間から深夜、早朝にかけてタイ、フィリピン、インドネシア、インドなど、周辺各国の中波局がガンガン飛び込んで来る。 中でも、882KHzのDWIZ-Metro Manila(フィリピン)や1314KHzのR.Thailand(タイ)などは昼間から入感しており、これらも含めて本格的に調査しようとすれば、僅か5日間ではとても不十分。逆に時間をかけてじっくり聴き込めば、かなりの収穫を挙げられそうである。滞在期間が長ければ、たまには寝坊してゆっくり休む日も入れられるのだが、今回は1日1日が非常に貴重だったため、睡眠時間を大幅に削って行なった連日の調査にかなり厳しいものを感じた。 また、旅行前はベトナムの地方短波局はもちろんのこと、ラオス、カンボジア、ミャンマーといった周辺のインドシナ諸国の短波局もしっかり調査してこようと資料を揃えて意気込んでいたものの、宿泊したホテルが鉄筋コンクリート建てだったこと、予想通り?夜は遅くまで遊び歩いてしまったこともあり、結局殆ど手をつけられずじまいであったのは残念。 ベトナム国内局に関しては、現時点ではどこを捜しても有益な資料が見つからないこともあり、ほぼゼロの状態からの調査を強いられた。今回は完全に「下調べ」に終始してしまった感もあるが、これで全体像は掴めたので、次回の旅行では更なる成果が期待できるだろう。 * * * 以上、何しろ現地での滞在期間が僅か5日間(前後2日はほぼ丸1日移動に費やされてしまったため、実質的には3日間。しかも、観光その他の時間を差し引くと、現地調査に費やした時間は微々たるもの)ということもあり、ペンディング事項山積のままの帰国となってしまったが、これは次回旅行時の課題としたい。また、これをご覧の方々が将来ベトナムを訪問された際、これを参考により深く調査を進めて頂ければ、私としてはこの上ない喜びである。 最新の「WRTH」をご覧頂ければ一目瞭然のように、現在に至ってもベトナム国内の放送事情はほとんど解明されていない。新しいものを発見する喜びがたいへん手軽に味わえるといった意味で、ベトナムはとても魅力的な調査対象と言えるだろう(何しろ、聴いたものすべてが新しい発見であるといっても過言ではない)。 次回の旅行が今からとても楽しみである。■ ※ 本稿は、町田ミーティングの会報「LONG PATH」誌1996年7月号へ寄稿したものに加筆・修正したものです。また、内容につきましては、すべて「調査時点(1996年6月)のもの」であることをご承知おきください。 【 参考文献 】
© 1998- ATLANTA DX ONLINE by AR7030PLUS - ALL RIGHTS RESERVED |